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Xゲームズリーグで初めての金メダル

文、写真:河上 竜平

 

Xゲームズ・サクラメント大会が終わると、翌朝に日本へ向けて出発した。翌週末にはXゲームズ千葉大会に出場する。その間、家に戻れたのは1日だけ。ホームパークであるジースケートパークで調整して、公式練習初日に千葉入りするというハードスケジュールだった。時差ボケも、体調を崩すこともなかったのが幸いだった。エマだけではなく、サクラメントと千葉の両方に出場する選手とその家族、そして関係者は本当に大変だったと思う。

 

公式練習は合計3日間あった。最近のコンテスト中の動きはお決まりになっている。ホテルと会場と近くのレストランの行き来をするだけだ。疲れを溜めないことと、スケートに集中するためにそうしている。エマもそうしたほうが調子がいいようだ。

 

サクラメントでは、ベストトリック※1のみの出場だったが、銅メダルを獲得することができた。今回の千葉では、ラン※2にも出場できる。エマはベストトリックよりも、ランに照準を合わせてずっと練習してきた。もちろんメダルも目標だが、それ以上に、磨いてきた高難易度のトリックのコンビネーションを披露したいという思いが強かった。

 

練習日によって多少の変更はあるが、使えるのは1日あたり1時間半程度。サクラメントでも同じルーティンの練習を行ったし、感触的にも、合わせるのにさほど時間はかからないだろうと思っていた。トリックでもルーティンでも、精度が悪いものを出さざるをえない場合は焦りもあるだろうが、エマにとって自信があるルーティンだったので問題はなかった。むしろ、この大会でしか滑れない大きなサイズのバートを生かし、今大会では出さないトリックまで練習する姿に成長を感じた。注意したのは、怪我をしないように集中することだけだった。

 

エマのルーティンを大きくとらえると、難易度のレベルごとに分けたものが3つある。その3つを日々練習してきた。本番でそれぞれをどんな順番で使うのか、エマと相談した。1本目からいちばんむずかしいランをやるという案もあったが、せっかくほかも練習してきたし、盛り上がるような展開もつくりたいということで、1本目はレベル1のランを通して、2本目にもっともむずかしいレベル3のランをすることにした。

 

当然ながら、本番のときは観客がいて、ランの待機時間が長くなったり、プレッシャーがかかったりするので、勝敗の行方はわからない。エマは勝ち気な性格ではないが、全力でいくことは間違いない。だからこそ、本番だからといってミスしたとわかったら無理に乗りにいかずキャンセルすること、世界トップレベルのスケーターとセッションできるこの大舞台を楽しむこと。わたしはエマにこのふたつのアドバイスを何度も伝えた。

 

そして、本番当日。ランの仕上がりに自信を持ってその日を迎え、エマはいつもどおりリラックスしていた。本番直前のウォーミングアップ。ほかの選手からピリついた空気感が伝わってくる。関係者もスタンバイしはじめ、観客がバートの前に集まってくると、周囲の空気がいっきにXゲームズ本番モードに変わった。

 

ウォーミングアップの途中、わたしもバートの階段を登り、上から景色を見渡した。周囲はXゲームズ特有の熱気に包まれていた。このステージに立っているエマを見て、自分の息子ながら、その心の強さに感心させられる。全力を尽くして練習をこなしてきたからこそ、世界最高峰の大舞台でも冷静でいられるのかもしれない。バートを照らす以外の照明が落とされ、MCが競技開始を宣言した。各選手が紹介されていく。わたしはエマ以上に緊張していた。

 

いよいよスタート。各選手、いい滑りを見せていた。名前をコールされたエマが滑り出した。歓声のなかで届くかわからないが、わたしはとにかく声を出して応援した。一つひとつのトリックをていねいにメイクし、みごとにフルメイクで30秒を滑りきった。高得点をマークし、全員が1本目を滑り終えた時点で3位につけた。2本目はもっともむずかしいルーティンだ。成功させる自信はある。エマに声をかけると「まぁ、あと2本あるし大丈夫。決めたいなー」と落ち着いた様子だった。悔いのないように、持てる力を出しきってほしいと、心から思った。

 

2本目は、高難易度トリックのオンパレードだ。少しでもミスすれば、最後まで滑れない。わたしは大声で応援した。どのトリックもものすごく長く感じ、スローモーションのように見えた。30秒終了間近のラストトリック。エマはメイクすると、感情を爆発させて大喜びした。得点が発表され、1位に躍り出た。エマもわたしも、そのハイポイントに驚いた。ルーティンを組むときには、どれぐらいの得点が出るかなんてわからない。ただ、エマが今の自分の最高だと思うルーティンを組んで、ひたすら練習に励んだ。そのルーティンに高得点がついて、最高にうれしかった。

 

3本目の滑走順は、2本目までの1位が最後から2番目、2位が最終滑走というルールだった。最終滑走は、エマのあこがれのギー・クーリー。エマの最後の出番がやってきた。この時点でも、順位は1位。ギー・クーリーとエマの一騎打ちとなった。エマの名前がコールされた。2本目でエマは力を出しきったので、あとは滑りたいように滑ろうと伝えた。エマは連続900※3を考えていた。しかし、連続900の手前のトリックでミスをして、3本目を終えた。残すところは、ギー・クーリーのラン。彼はXゲームズを4連覇中だ。高難易度のルーティンで、他の追随を許すことなく、圧倒的な勝利を収めてきた。エマもわたしも、ギー・クーリーと勝負できるところまで来られたことだけでも感無量だった。

 

ギー・クーリーのランが始まった。順調にトリックを重ね、残りひとつ。これを決めるかどうかで、順位が変わるに違いない。そして、ラストトリックはミス。得点が発表され、エマの優勝が確定した。エマとわたしは声を上げた。エマのハードな練習と努力をずっと見てきた妻は大泣き。エマと一緒に練習してきたヒイロも大喜びした。いろいろな壁にぶつかりながらも、ただひたすらに練習を重ねてきたエマをいちばん近くで見てきたわたしも、涙を堪えることができなかった。いちばん落ち着いていたのは本人だ。金メダルを獲った喜びをインタビューで話し、応援に来てくれていた友だちともふつうに喜びを分かち合い、ずっとニコニコ笑っていた。その姿を見て、あらためて、肝が据わっているのだと思った。そこからしばらくはインタビューや撮影がいくつかあったのだが、うれしすぎて覚えていない。

 

その後、エマが夏季冬季合わせてXゲームズ史上男子最年少金メダリストだと聞かされて驚いた。「Xゲームズで金メダル獲りたい」と小さいころから言っていたが、まさか小学生のうちに実現させるとは思ってもいなかった。それだけの練習をしてきていたのだと思うと、本当に感動した。またひとつ大きな夢が叶ったわけだが、これからもエマは努力を続け、成長していくのだろう。わたしたち家族もエマのことを、そして、弟のヒイロのこともひたすら応援しつづけたいと思う。

 

 

※1 制限時間内に、ひとつのトリックの難易度と完成度を競う競技方式。
※2 1回30秒のルーティンで競う競技方式。合計3回滑走できる。
※3空中で体とボードを一緒にお腹側へ2回転半させるトリック。

威圧感がありながらもワクワクさせてくれる、Xゲームズの巨大なバートランプ

ヒイロもバートに上がり、間近でエマの練習を見学。貴重な経験だ

世界を舞台に活躍する同年代の仲間、DJ RINOKAちゃんも応援に駆けつけてくれた

三原さんに金メダル獲得のご報告をできてうれしかった。三原さんに声をかけていただいたのは、エマがバートのコンテストに出場するよりもずっと前のこと。初めてアトリエでお会いしたときに、「Xゲームズに出場したいです。金メダルを獲りたいです」と、スタッフのみなさんの前でエマがお話ししたことを覚えている。いつ実現するのかわからない、そもそも出場すら叶わないかもしれない夢。みんなに応援していただきながら、出場の仕方すらわからない始まりから、目標に向かって日々練習を重ねていき、Xゲームズ出場の機会を得て、昨年度は最年少で銅メダルを獲得し、ついに金メダル獲得という夢を叶えることができた。そのことを、こうしてSOUND OF SUNRISEの記事としてアップさせていただける日が来るなんて、本当に夢のようだ。つねに応援していただいているという意識がエマにあったからこそ、わたしたち家族も迷うことなく進めたと、心より感謝している。これからもさらなる夢に向かって歩んでいきたいと思う

靴ひも結べなくんにもご報告

POSTED : 2026-09-14