文、写真提供:河上 竜平
Xゲームズジャパンからお声がけいただいて、6月13日のオリックス・バファローズと読売ジャイアンツの交流戦で、エマが特別始球式に登板させてもった。スケートボードのオリンピアンの方々が始球式をしているニュースを見て、「いつか始球式に出られたらなぁ」と話していたところだったので、連絡をいただいたときは半信半疑でとても驚いた。
エマに聞いてみると、「やりたい!」と即答だった。こんな経験はなかなかない。家族全員で喜んだ。エマにはサッカーをさせたかったけれど、スケートボードにハマった。そうしてがんばって続けていたら、野球の始球式に登板できることになるなんて思いもよらなかった。
エマは野球未経験で、グローブはもちろんのこと、野球ボールすら触ったことがなかった。そこでさっそくスポーツ店に行き、グローブとボールを購入。始球式に向けて、スケボーの合間に練習をすることにした。
マウンドからキャッチャーの位置まで20メートル弱と知り、届くかどうかは分からなかったが、とにかく投げ方だけでもそれなりに見られるようにしようと、経験者に教わりながら練習を始めた。ふだんボールを投げていないと、強く投げることで肩を痛めると聞いたので、少しずつ距離を伸ばしながらまっすぐ投げる練習を重ねた。雨の日も多く、毎日キャッチボールできたわけではなかったが、本番前にはそれなりに投げられるようになっていた。
そして当日。京セラドーム大阪に到着すると、関係者用の地下駐車場に案内され、そこからドーム内へ入っていった。野球選手やコンサートをするアーティストもここを通るのかと思いながら、非現実感を味わう。中に入るとラウンジのような部屋やオフィスもあり、京セラドームとは思えない空間が広がっている。やがて、応接室へ案内された。
しばらく待っていると、球団の方がエマにオリックス・バファローズのユニホームと帽子をプレゼントしてくださった。背番号は900。エマの代名詞とも言えるトリック「900※」から取った番号だ。さっそく袖を通したエマは、初めてのユニホームに興奮していた。
そのあと、今日の一連の流れについて説明を受け、いよいよグラウンドへ向かうことになった。迷路のような通路やエレベーターを通り、ごくふつうの扉を開けると、まぶしいライトに照らされたグラウンドが目の前に広がった。選手たちが練習していて、観客席が反り立つようにたくさん見えた。この光景は、わたしにとっても衝撃的だったが、さすがのエマも驚いた様子だった。
エマはさっそく選手とキャッチボールを始めた。プロ野球選手とキャッチボールできるなんて、本当に光栄なことだ。少しでも練習してきてよかったと思った。
その後、履正社高校の吹奏楽部による演奏、オリックス・バファローズ球団公式ユニット「BsGravity(ビーズグラビティ)」のショーと続き、いよいよ特別始球式だ。エマは球団の方に連れられて、一塁線の手前まで移動して待機。わたしは離れた場所から、緊張しながら見守った。
ついに出番がやってきた。バックスクリーンのビジョンにXゲームズのCMが流れる。エマの紹介映像が映し出され、アナウンスが響いた。それと同時に、エマはマウンドへ向かっていった。少し緊張した様子もあったが、それ以上に楽しそうだった
MCが「プレイボール!」とアナウンスすると、マウンドのエマはキャッチャーを目がけて投球。少し逸れて3バウンドしたが、キャッチャーが捕球してくれた。無事に始球式を終え、グラウンド内で記念撮影をして戻ってきた。
そして、そのまま取材対応の部屋へ移動すると、テレビ局や新聞社の方々からのインタビューを受けた。球団旗の前でのインタビューは、スポーツニュースでよく見る光景で、そこにいるエマの姿を見るのはとても不思議な気持ちだった。
特別始球式のすべてのミッションを終えたあと、初めての野球観戦をした。エマは、プロのピッチャーが投げるボールのスピードが想像以上だったことにびっくりしていた。
このような貴重な経験をさせていただき、本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。翌週となる6月20日〜22日には、同じ場所でXゲームズ大阪が開催され、出場することになっている。エマはいつにも増してXゲームズを楽しみにして、はりきっている。
※ 空中で体とボードを一緒にお腹側へ2回転半させるトリック。
「900」を背負ったエマ。3桁の背番号はなかなか見ない
オリックス・バファローズの公式キャラクター、バッファローブルとバッファローベルがマウンドまでエスコートしてくれた
集中的な自主練を重ねたエマは、堂々としたピッチングで会場を沸かせた
始球式のあとは、ヒイロも一緒にバッファローブルと記念撮影。スケートボードを通じて、こうして多くの貴重な経験をさせてもらえていることに、感謝の気持ちでいっぱいだ
POSTED : 2025-06-19