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OCEANS TALK and SURF SESSION with Tatsuro Tomoshige Part 2

PLAYERS : MASAKI HARADA

TOP STORY OCEANS TALK and SURF SESSION with Tatsuro Tomoshige Part 2

原田 正規
MHASAKI HARADA

 

OCEANS TALK and SURF SESSION

with Tatsuro Tomoshige

Part 2

 

オーシャンズ※1のメンバー、友重達郎と原田の会話は尽きない。今回の話題は、サーフィンの聖地として知られるハワイ・オアフ島ノースショアについて。友重ファミリーは、毎冬ハワイへ通っているという。

 

※1 2008年に結成。メンバーは原田 正規、友重 達郎、吉川共久、山本 茂、山浦 宗治、山田 弘一、市東 重明、遠田 真央という8名のプロサーファーたち。

 

文:高橋 淳
写真:飯田健二
ハワイの写真提供:友重達郎

 

Part 1、友重達郎のプロフィールはこちら>

原田正規(以下、MH):友重は家族で毎年ハワイに行ってるじゃん。どうしてハワイなの? ほかにもインドネシアとかカリフォルニアとかいろいろ行き先はあるけど。
友重達郎(以下、TT):やっぱり、あの波を子どもに経験させるため。
MH:ああ。ハワイの波さえやっていれば、ほかの場所の大きい波に出会ったとしても滑れると思う。
TT: CS※2にパイプラインが入ったでしょ。だから、これからプロサーファーを目指すなら、ハワイの波に乗れないと通じない。最近、女の子だってハワイの波でやばいじゃん。
MH:本当にチャージしててびっくりしたよ。
TT:ハワイに行けば、そんな世界のレベルを生で見られるから。
MH:世界中のサーファーがいっきに集まるから、いろんな情報も入るしね。
TT:正規もずっとハワイやってたじゃん。おれは正規のおかげでハワイ行けたからさ。ブラディ※3つながりで呼んでもらえて。
MH:ププケアのビーチフロントの家を借りてね。最高だったよね。
TT:あれから今につながってるんだよ。
MH:友重の長男のリッキー(リキ)はハワイでもがんばってるよね。怪我も多いけど、それでも本人が好きでやってるよね。
TT:そう。だから、やりたいんだったら、親としてサポートするよね。

 

 

※2 世界的なプロサーフィン競技団体、ワールドサーフリーグ(WSL)が開催するチャレンジャーシリーズの略称。最高峰のチャンピオンシップツアー(CT)への登竜門となる国際シリーズ。
※3 原田と友重がライダーを務めていた、東京・江戸川区にあったサーフショップ。

友重リキ。パイプライン

友重リキ(左)

MH:でもハワイの波は本当に危険でさ、ヘタしたら死んじゃうじゃん。親としての気持ちはふつうじゃないよね。
TT:そうだね。命懸けだもんね。だから準備万端にして、とにかく安全に……。ハワイって、けっこうストレスでもあるじゃん。あの波を「やらなきゃいけない」って。正規はそういう気持ちはなかった?
MH:おれにはあんまりストレスはなくて、いつも「ハワイ行きたい」って思ってた。味をしめてたんだよね。やれば返ってくるものがあったから。写真を残して、サーフィン雑誌に出られるっていう。
TT:おれの場合、現役のときはあの波に対する恐怖と「乗らなきゃいけない」っていうプレッシャーを感じてたから、けっこうストレスだった。「もう今年で最後かな」と思って、ハワイに行くのを終えたときに、ちょっと安心した。「もうこれで死なないわ」みたいな(笑)。
MH:そうなんだね。

友重達郎。パイプライン

TT:そうやって怖さから逃れたんだけど、子どもがハワイの波でやるようになって、また自分も行くようになって。「あ、またやっちゃってるな」って思いながら(笑)。怪我しないように、トレーニングもして。
MH:この歳でパイプラインに行くリスクはすごく高いと思う。
TT:うん。だけど、今は現役時代のようなストレスがなくなったの。
MH:なくなった?
TT:今は仕事じゃないからさ。乗らなきゃいけないわけじゃない。
MH:自分に対する縛りがなくなった。
TT:そう!そこから解放されて、自分が乗りたいから、あの波に乗ってる。だから今は楽しいし、「行きたい」と思って行ってる。
MH:たしかに今行ったら、テンションも上がるだろうな。でもやっぱり「やばい」っていうシチュエーションはあるでしょ?
TT:ある。
MH:ハワイは本当に恐怖なんだけど、そのあとの平和さがおれは大好き。「今日これやっちゃったよ」っていう。自分に自信がつく。サンセットビーチのマックスサイズとかやったあととかね。15フィートぐらいの。
TT:死ねるって思えるよね。

MH:1回行かなくなってから、どれくらい期間が空いたの?
TT:1〜2年だけ(笑)。リキが赤ちゃんのころにはまた行ってたかな。
MH:かなりお金かかるでしょ?
TT:毎年車を買えるくらいかかるよ。しかも、それが年々上がるんだ。今年はもう半端じゃなかった。去年も高いと感じたけど、今年はその倍。レンタカーもすごく高くなっていてまともには借りられないから、向こうの友だちから安く借りてる。
MH:ふつうに借りたらいくら?
TT:安くて、1日100ドル(約1万5000円)くらい。うまくやりくりしないと長期滞在は無理だよね。家も友だちのところを間借りしてるし、向こうにいるあいだに1回しか外食しない。コストコで肉買って焼いて、米炊いて。
MH:毎冬何か月行ってるの?
TT:リキは3か月近く行ってる。向こうで小学校にも通ってた。おれは店があるから、だいたい1か月。妻のゆりはリキと一緒にずっと行ってる。
MH:もう1軒家建てられたね。
TT:建ってるね。

MH:がんばってるね。
TT:だから、この時期に働かないと。
MH:真似しようって思ってもなかなかできないよ。今どき、サーフショップをやって毎年海外に行くってむずかしいじゃん。相当努力しないと。
TT:お客さんとの信頼関係を大切にしながら、スクールをがんばってる。それでも収入は限られるから、ハワイでいかにお金がかからない生活をするか。毎日ゆりが弁当をつくって、ビーチで食べながらサーフィンしてるんだよ。
MH:弁当代だってバカにならないよね。
TT:買ったら15ドル(約2300円)ぐらいだよ。
MH:昔は6ドル(約950円)とかだったよね。
TT:そんな感じで一家でやってるから、ライフガードとも自然と仲よくなるんだよ。「お前ら家族、また今年も来たな!」みたいな感じで(笑)。ライフガードタワーのそばの木陰に陣取ってるから。そこで弁当食べて、ずっとパイプラインに入ってる。

友重ゆり、ルキ、リキ、達郎。ハワイ・オアフ島ノースショア

友重ルキ

MH:そんなふうにやってるんだね。
TT:ゆりがすごいね。ゆりが向こうの人とコミュニケーションをとって仲よくなって、そのおかげで家を間借りできるようになったり、車を安く借りられてるから。(ビッグウェイブスポットの)ワイメアでも、波が立ったときにジェットスキーを出すライフセーバーと仲よくなって、リキが入るときにちゃんと見守ってもらえるようになった。
MH:お母さんたちはすごいよね。おれたちが考えてないところを見てるから、ハッと気づかされる。
TT:そういうことが積み重なって、セーブしながら、やっと毎年行ける。
MH:でもハワイのハッピーライフから日本に帰ってきてさ、お金とかの計算とかしてて「やべえ」って思うときはない?
TT:悪い方向に深く考えないようにしてる。あとからメリットがついてくると思ってやってるから。

POSTED : 2025-09-29