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Xゲームズでメダル獲得!

文、写真:河上 竜平

 

Xゲームズ大阪が終わった翌日、ジースケートパークで軽く滑ってから、その次の日にソルトレイクシティへと向かった。なかなかのハードなスケジュールだ。日本からソルトレイクシティへの直行便はないので、サンフランシスコ経由なのだが、家を出てから到着までトータルで20時間ぐらいかかる。

 

夕方に到着しホテルにチェックインしてから、会場を下見に行った。19時ごろだったので、会場へは入れないが、外からでもわかる規模の大きさだ。じつは、この会場へは偶然にも昨年来ている。それは、トニー・ホークズ・バートアラートでソルトレイクシティに来た際に、ヴァンズパーク・ソルトレイクシティに滑りにきていて、そのヴァンズパークを含めたフェアフィールドが、今回のXゲームズの会場なのだ。またここに来るとは思ってもいなかった。

 

翌日会場に入り、選手登録などの手続きをすませて、今回滑るバートを見にいった。屋外のバートではあるが、滑走面がXゲームズ大阪と同じく、新しいものになっていた。滑走面の継ぎ目があった昨年のバートは大きく失速したのだが、今回はほとんど継ぎ目がない。エマの印象も「滑りやすそう。あとは両サイドの感じを見て、ルーティン合わせてく」と、とてもいいものだった。バーチカルは半円上の形で均等に見えるが、それぞれの側に多少の誤差がある。それにより、トリックがしやすかったり、しにくいポイントがある。横に長いので、多少の誤差があるのだ。

 

軽食を食べてから、練習へと向かった。すでに何人かがウォーミングアップを始めていた。まだ現れていないスケーターもいる。Xゲームズのバートの練習は緩やかな雰囲気で行われるのだが、とにかく日差しが強く暑いので、練習時間をフルに滑りつづけるのは困難だ。だから、各々のペースで休憩をとったり、練習後半に来るスケーターもいる。エマは、ふだん夜に練習することがほとんどなうえに、ジースケートパークは屋内なので、日差しと暑さに弱い。屋外で日中に滑るのは、去年のイタリアでの大会以来だ。なので、休憩の頻度を多めにとるようにした。ひとまず確認するように何本か滑る。「滑走面がいいし滑りやすい。風が吹くといややけど、風はヴェンチュラよりマシ」と、強風に煽られて苦戦した昨年のヴェンチュラ大会よりもマシなようだ。

 

この日は、本番でやる予定のトリックを一つひとつ確認し、練習の後半には、ルーティンの前半と後半を分けてやってみたのだが、問題なく成功させていた。エマのルーティンの精度は、とくにメンタルに左右される。問題なくメイクしているところを見ると、気分がいいようだ。

 

練習2日目。昨日の練習がうまくいったことと、アスリートラウンジでゲームをしたり友だちと遊んだりして楽しいようで、エマは上機嫌だった。念願だったトニー・ホークとの対談の撮影があったり、堀米雄斗選手と会って話ができたり、夢のような時間を過ごしていた。練習もスムーズに進み、何本かルーティンを成功させていた。翌日は、いよいよ本番。エマは「明日はぜったい乗れるわ」と自信を見せていた。

 

ラン本番当日。今回のルールは3本滑って、内1本のもっとも高い得点で競うこととなっていた。エマも「3本あれば成功できるし、早く乗れたら、チャレンジするわ」と自分のできるかぎりのことをすると、ポジティブだった。出場するスケーターは、もちろん世界トップクラス。勝ち負けよりも、今まで練習してきた成果を出しきることが目標だ。とくに、Xゲームズ大阪ではメイクできなかった後半の900※1から720※2、フェイキー720※3へと続く高難易度コンビネーションを成功させたい。

 

本番が始まった。1本目でいきなりアクシデント。得意の900で転倒してしまった。意気込みすぎたのかもしれない。かなり痛がっていたので棄権するかと思ったが、「滑れる」と、2本目もチャレンジすることとなった。そして、2本目。冷静になったエマは、ていねいにコントロールしてフルメイク。会場は大盛り上がりだ。ここまで、フルメイクしているスケーターはいなかった。練習のときもそうだったのだが、このバートに合わせるのに苦戦しているスケーターが多かった。ずっと目標に向かって練習してきていただけに、フルメイクしたエマは大喜びしていた。

 

3本目。「チャレンジしてくるわ」と、エマはスロープへと向かった。すると、なんと例の大技のコンビネーションを成功させた。さらに会場が沸く。エマの3本のランが終わった時点での順位は3位。「このままいけばメダル獲得だ」と頭によぎったが、考えないようした。最終滑走者が滑り終わり、得点が発表された。エマの3位が確定。エマもわたしもメダルを獲得できるとは思ってもいなかったので、とてもうれしかった。目標に向かって、毎日毎日練習して、転倒して食らったり、コンビネーションが怖くてできない日が続いたり、それでも、恐怖感を克服しながら、チャレンジしつづけて、この大舞台でルーティンをメイクができた。たくさんの人にサポートしてもらって、応援してもらって今がある。あらためてそう思うと、込み上げてくるものがあった。エマは、喜びを噛み締めるよりも先に、結果が出るとすぐにインタビューや撮影があり、受け答えしていた。「強いな」と、わたしは感心した。

 

メダルセレモニーの場所へと、大勢の観客の人たちに囲まれて祝福されながら移動した。このときに聞かされて初めて知ったのだが、10歳でのメダル獲得は、Xゲームズ男子史上最年少記録だそうだ。昨年は男子史上最年少出場だったので、2年連続で記録を更新できた。本当によくがんばった。エマは、あこがれのギー・クーリーと同じ表彰台に上がれてうれしそうだった。3年前、初めてXゲームズを千葉に観にいき、ギー・クーリーに会って、メダルを見せてもらって、一緒に写真を撮ってもらって「いつか一緒のXゲームズに出たい。メダルも獲りたい」と言っていたエマは、夢を実現したのだ。一緒に表彰台に上がるギー・クーリーの姿を見て、彼にもとても感謝した。

 

翌日は、ベストトリックの練習日だった。興奮冷めやらぬまま、エマが今年の1月に成功させてから努力を続けてきたフェイキー1080※4の練習だ。だがこのトリックは、以前にブログで書いたように、成功させたとしても足に負担が掛かるので、あまり練習できないトリックだ。だから、この日もメイクはせずに、回転の仕方を合わせる練習だけ行った。あとは、せっかくXゲームズのバートを滑れるので、ランに入れていなかったトリックを試したり、自由に滑って気分よく練習を終えて、本番に備えることにした。

 

そして、ベストトリック本番。ウォーミングアップも、回転を合わせるだけの練習をした。あとは、本番で集中して成功させるだけ。練習ではばっちり回転を合わせられたから、きっと乗れるはずだ。エマも「完璧に合ってきてるから、成功できるわ」と自信を見せていた。

 

1本目、みごとに成功。着地で少しバランスを崩したものの、うまくコントロールしてメイクした。残り時間は、今までやったことがないワンフット900※5にチャレンジしたが、そんなに甘くはなく、失敗してしまった。いずれメイクできるようにと、課題を残して、ベストトリックが終了した。結果は4位。全力を出しきって目標を達成できたので、大満足だった。

 

こうしてエマにとって4度目のXゲームズが終わった。Xゲームズに出場できたこと自体が本当にすごいのだが、銅メダルまで獲得できて最高だった。エマも「あきらめずにずっとがんばってきてよかった」と、喜び噛み締めていた。

 

エマのスケートボードをずっと家族で応援してきたが、家族の力だけでは、ここまで来ることは不可能だった。多くの人たちのおかげで、スケートボードを続けることができ、アメリカにまで来ることができて、Xゲームズの舞台に立てた。サポートしてくれている方々には、本当に感謝でいっぱいだ。エマも5年生になり、そのことをかなり理解してきている。エマには、これから先もスケートボードを楽しみながら、がんばってもらいたい。

 

 

※1 空中で体とボードを一緒にお腹側へ2回転半させるトリック。
※2 空中で体とボードを一緒にお腹側へ2回転させるトリック。
※3 ふだんと逆のスタンスで進み、空中で体とボードを一緒にお腹側へ2回転させるトリック。
※4 空中で前足のつま先を使ってボードを蹴り抜き、背中方向に縦に1回転(フリップ)させながら、体とボードを一緒にお腹側へ1回転させ、デッキの前側を後ろの手で掴むトリック。
※5 空中で体とボードを一緒にお腹側へ2回転半させながら、途中で片足を抜くトリック

バートからの眺めは絶景。ソルトレイクの山々が見える。2034年には、2002年に続き冬季オリンピックが開催予定の街だ

ソルトレイクシティの標高は1500メートルほど。そんな会場で、いつもより高く飛びたいエマ

スケートボードの神様、トニー・ホークと対談をした。信じられないほど貴重な体験だ

アスリートラウンジでは発表前の最新ゲーム、トニー・ホークズ・プロスケーター3+4をプレイすることができた

いろいろなお店があり、とても過ごしやすいソルトレイクシティのダウンタウン

POSTED : 2025-07-25