
文、写真:河上 竜平
ジャッカロープで準決勝を1位通過。想像以上の結果にエマも喜んでいた。その日の夜のこと。ホテルのロビーで、エマが尊敬するレジェンドスケーターのPLG(ピエール=リュック・ガニョン)に会った。そして、予選のランで見せた「インディグラブ540※1からインディグラブ720※2、フェイキーインディグラブ720※3へつなぐ後半のコンビネーションがすばらしかった」と声をかけてもらえた。エマの代名詞はバックサイド900※4だが、同時に磨いてきた「つなぎ」を評価してもらえたことが何よりうれしく、大きな励みになった。コンテストは順位がつくものとはいえ、トップライダーには、他人が真似できない技を軽々とやってしまう人、独自のスタイルを貫く人、滑りに思いが宿っている人が多い。だからこそ、勝つこと以上に、見せたかった流れが評価されたことが、エマにとっては大きかった。
エマは「決勝では自分の見せたいランを成功させる。ルーティンの前半部分のコンビネーションの難易度を上げる」と意気込んでいた。予選では、後半の見せ場を成功させるため前半を抑えたが、決勝は攻めると決めた。あとは試合前の公式練習で合わせるしかない。
ところが決勝当日にいざ練習を始めると、前半の難易度を上げたことでスピードが落ち、後半につながらない。人も多く、思うように流れをつくれないエマは苛立ち気味だ。何本かはルーティンを通せたものの、少しでもミスすれば高さが落ちる。体が小さいため筋力で立てなおすこともむずしい。決勝では、集中力を高めて乗りきるしかない。
そして、8名による決勝がスタート。JD・サンチェス、コリン・グラハム、ハドソン・ウォーカーら錚々たる顔ぶれだ。海外ではいつもながら、観客も多く会場は大盛り上がり。日本のコンテストでも、いつかこんな光景が見られたらと思う。エマは緊張した様子もない。「乗れそうなら乗る」と気負わず、危ないときはすぐにキャンセルするつもりでいたので、こちらも安心して見ていられた。
1本目。早い段階で流れが合わずキャンセル。2本目も同じく途中でやめた。それでも成功させたスケーターが少なかったため、ルーティンの後半まで進めたエマは上位につけていた。ただ、残されたランはあと1本。追い込まれた状況でも、エマは冷静だった。
ラスト1本。前半の見せたいコンビネーションを成功。しかしわずかに失速。そこで、準決勝で見せた後半コンビネーションの一部を、バックサイドインディグラブ540からシンプルなエアーに切り替え、バックサイド720インディグラブとフェイキー720インディを決めてランをまとめた。そこで気分が乗ったのか、最後におまけでバックサイドディザスターリバート※5を狙ったが失敗。規定時間の30秒に入るか微妙なところだったが、点数に影響しそうだったので、正直ここはひかえてほしかった。ただ、エマはスケーターとしてやりたかったのだろう。しかたない。
結果は4位。最終走者だったため、その場で順位が確定した。トリックの難易度だけ見れば、もう少し上でもよかったと思うが、準決勝で評価された後半のレベルを少し落としたことが影響したのかもしれない。そして最後の一発のミスが響いた可能性もある。それでも、前半の狙っていたコンビネーションをしっかり決められたことにエマは満足していた。やりたいことを決めて喜ぶというのは、じつにスケーターらしい。
こうして4位入賞でジャッカロープを終えた。出場メンバーを考えれば、十分いい結果だ。トップクラスのライダーと滑ったことで学びも多く、次に向けた課題も見えた。エマにとって、とても意義のあるコンテストになった。
※1 空中で体とボードを一緒にお腹側へ1回転半させながら、デッキのつま先側を後ろの手でつかむトリック。
※2 空中で体とボードを一緒にお腹側へ2回転させながら、デッキのつま先側を後ろの手でつかむトリック。
※3 後ろ向きに滑り、空中で体とボードを一緒にお腹側へ2回転させながら、デッキのつま先側を後ろの手でつかむトリック。
※4 空中で体とボードを一緒にお腹側へ2回転半させるトリック。
※5 ボードの中央をコーピングに掛けていったん止まり、体をお腹側へ180度まわして降りるトリック。

決勝直前のエマ。いい意味で、緊張感はまるでなかった

天候もよく、ジャッカロープのバートはとても滑りやすかった

アフターパーティーの様子。たくさんのスケーターが集まり、交流を深める楽しい時間。スケートボードのイベントは、競い合うだけではないところがいい

昔のヨーロッパのような雰囲気を持つモントリオールの街。英語よりフランス語がメイン

古い建物と石畳の道路。冬は寒く、雪も降って大変だというだが、とても暮らしやすそうな街だった

豪華客船も通るセントローレンス川。五大湖から海へと伸びる国際的な航路だと知って感動した
POSTED : 2025-12-08