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立神杯2025 Part 2

PLAYERS : MASAKI HARADA

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原田 正規
MHASAKI HARADA

 

立神杯2025

Part 2

 

ついに始まった立神杯。立神ならではの波、天気によるドラマチックな展開のなか、原田の地元・唐津のサーフシーンに新たな歴史が刻まれた。

 

文:高橋 淳
写真:飯田 健二

波はスモール。大会はオン

 

大会当日。実行委員長を務める原田は、夜明け前からソワソワしていた。波はあるのか。暗いうちから、実家の近くの海を見にいく。まだ波は見えないが、大きくサイズアップしている気配はない。

 

6時前に会場の立神ポイント(以下、立神)に到着。風は弱い。肝心の波は、もも〜たまのセットで腰程度と小さい。

 

「どうしよう……」

 

大会が成り立つのか。この波が一日持つのか。波を見た瞬間、原田は不安な気持ちを抑えられなかった。だが『仲間たちがいるからなんとかなる』と開会を決めた。

大会当日、早朝の立神。波は穏やかだったが、立神岩寄りのメインピークと、海に向かって左側のピークの2ポイントでヒートを行うことに決定

「仲間たちがいるからなんとかなる」。長女コア(右)は、原田とともにエキシビジョンに参加するため前夜に唐津入りした

本部エリアには、「九州サーフィン発祥の地」とされる立神ポイント、そして足がけ57年という歴史を持つ立神杯についてまとめたパネルが展示されていた

唐津サーフシーンを築き上げた先人たちの遺産も展示。「立神杯が九州でもっとも古く歴史ある大会であること、そして先輩たちが紡いできた歩みに誇りを抱きながら開会のあいさつをした」と原田は語る

長い眠りから目覚めた立神杯

 

地元唐津のみならず、福岡や宮崎、長崎に山口と、九州を中心に各地から集まったサーファーたちが腕を競い合う。雲が取れ、晴れ間が出るとともに波がよくなってきた。

 

カイマナとカイルはスペシャルクラスで大健闘。両者ともに、小柄な体を生かしてテンポよく波をつかみ、波が切り立つ手前のセクションで技を決めていく。ふたりはそれぞれのヒートを勝ち上がり、決勝戦で顔を合わせることになった。

ジャッジブースで大会を見守る原田。プロサーファーをはじめとするエキスパートたちが九州各県から集まり、ジャッジを務めた

カイマナは初戦のヒート1を1位通過

カイルも同じく、ヒート2を1位通過し、ふたりそろって決勝戦に駒を進めた

2007年以来、39回目となる立神杯を祝福するかのように、太陽が顔を出し、波のコンディションが上向いた

オンショア吹き荒れたエキシビジョン

 

正午過ぎ、各クラスの決勝戦の前に、原田たちエキスパートによるエキシビジョンが予定されていた。すると、急に雨が降り、強いオンショアが吹いてきた。海面がいっきに荒れ出す。だが彼らにとっては、波がないより好都合だ。この天気や波の急変について、原田はこう語る。

 

「これぞ日本海。エキシビジョンでサーフしているときに、ファイナルでは雨と風がやみ、波がよくなるというイメージできた」

 

 

※ 海から岸に向かって吹く風。風が波頭を潰すため、基本的にはサーフィンに適さない。

親子でエキシビジョンに参加。

バンプの多いむずかしい波だったが、ここで育った原田にとってはお手のもの

コアはみごとなノーズライドを披露。華麗なサーフィンで会場を沸かせた

福岡出身の現役トッププロサーファー、田中大貴。生まれて初めて出場した大会が2007年の立神杯だった

福岡出身のプロロングボーダー、平川義宏

プロサーファーとして活躍した経歴を持つ宮崎出身の緒方伸八

緒方と同じく、宮崎出身の元プロサーファー、水元公志

原田の母(左から2番目)もエキシビジョンを見に訪れた。「コアと自分がサーフィンしているところを生で見せられて、とても感慨深かった」

ふたたび紡がれはじめた伝統

 

原田がイメージしたとおり、決勝戦になると雨がやみ、波が整った。サイズも朝よりはるかにある。第39回立神杯のフィナーレを飾る、スペシャルクラスの決勝戦が始まった。

 

ここでもカイマナとカイルの快進撃は止まらない。千葉で鍛えた、波を大きく使うサーフィンでポイントを稼いでいく。対戦相手は宮崎と福岡の選手。全員10代の接戦を制したのは、カイルだった。カイマナは惜しくも3位という結果に。こうしてドラマチックな一日は終わり、18年ぶりに開催された立神杯は新たな歴史を刻んだ。

 

「大会を継続していれば57年という半端じゃない歴史。なぜ続けられなかったのか、当事者の先輩たちに問いたい気持ちもある。地元の仲間同士の対立は本当にいらない。唐津・立神のサーフシーンには、立神杯という由緒正しいサーフィン大会が軸になければならない。立神杯は先人たちの精神であり、唐津のサーファーにとっての秩序だと思う」

スピードのあるライディングで攻めたカイマナだったが、優勝には手が届かなかった

鋭いリッピングで優勝を勝ちとったカイル

スペシャルクラスで表彰台に立ったカイマナ(左から2番目)とカイル(右)

原田が思いを語り、第39回立神杯は幕を閉じた。「この伝統ある大会を来年以降も続けていきたい。この先10年はおれがやります!」

POSTED : 2025-11-28