

PLAYERS : MASAKI HARADA
原田 正規
MASAKI HARADA
Sリーグ開幕戦26-27
Part 1
Sリーグ26-27シーズンが始まった。初戦の会場は、茨城・河原子。昨シーズン最終戦のバリ・クラマスマスターズ以来の一戦に、原田は心新たに挑む。
文:高橋 淳
写真:飯田 健二
台風9号のうねりを待つ河原子
Sリーグ26-27シーズンは、茨城県内の3会場を舞台にした「IBARAKI BREAK」で幕を開けた。大洗、日立、鉾田をめぐり、ショートボード、ロングボード、マスターズの各カテゴリーで初戦が行われる大会シリーズだ。その第2弾として、7月8日から日立市の河原子北浜海岸で開催されたのが、原田の参戦する第30回茨城サーフィンクラシック河原子プロだ。
茨城サーフィンクラシックは、1996年に始まった歴史ある大会だ。長年にわたり大洗を中心に開催され、日本のトッププロが集う伝統の一戦として知られている。その歩みを支えてきたのが、県内のサーフポイントやサーファーをサポートし、地域のサーフシーンの活性化に取り組むI.S.U(茨城サーフィンユニオン)である。第30回を迎えた今年は、開催地を茨城県内の3エリアへと広げ、河原子では日立市初のプロサーフィン大会が行われた。
原田にとって、茨城は相性のいい舞台でもある。2024年のSリーグ大洗戦で準優勝。さらに若き日の2002年にも、JPSA I.S.U茨城サーフィンクラシックで準優勝を飾り、大会期間中のハイエストポイントを記録して表彰された。
今回、原田が現地入りしたのは、大会を2日後にひかえた7月6日午後。タイミングを合わせたかのように、台風9号がマリアナ諸島付近を西北西へ進んでいた。関東の太平洋側には翌日からうねりが届き、大会初日の8日にかけて波が高まるという予報。河原子がどこまで反応するのか、期待を抱かせる状況だった。
「とりあえず入ってくる」
到着するや否や、原田はウェットスーツに着替え、沖へと向かった。

6日午後2時ごろ現地に到着。河原子の波のクセをつかむべく、すぐにサーフィン。波のサイズは腰〜腹程度と、まだ本格的ではないものの、台風のうねりが入りはじめていた

サイズは小ぶりながらも、パンチのある河原子の波。掘れたセクションを見つけ、すかさずアクションを繰り出す原田

会場には選手たちが続々と到着。「いい波に乗れれば、ぜったいに勝てる。でも試合はそうかんたんじゃない。だからこそ、勝ち甲斐がある」(原田)

大会前日、7月7日の河原子ポイント。予想どおり、前日よりサイズアップして胸くらいの波がブレイクするようになった
予報が的中しサイズアップ
迎えた大会当日は晴天。弱いオフショア※1が吹き、海面の状態も良好。波は腹〜胸、セット※2で肩前後まで上がっていた。選手は7時に会場に集合。もちろん、コンテストはオンだ。
河原子は、うねりの向きや潮位によって表情を大きく変えるポイントだ。砂浜をベースに、テトラポッドや河口、岩場が波のかたちに影響を与え、ピークごとにテイストの異なるブレイクが生まれる。ふだんは比較的乗りやすい波も、サイズが上がれば掘れて力強さを増す。
※1 岸から海に向かって吹く風。風が海面を整えるのでサーフィンに適しているが、強すぎると波に乗りづらい。
※2 その日のなかでも大きなうねり。何本か連なって沖からやってくる。本数や周期はコンディションによって異なる。

その日のスケジュールが発表されるのは、当日の朝。原田の出番は午後だった

午前中、練習時の原田のサーフィン。波の勢いが増すとともに、調子も上がっている様子だった

翌日に自身のヒートをひかえた長女のコアも登場。親子で勝利を目指す

次男のイムアも会場にやってきた。ヒート待ちの穏やかな時間

沖縄出身のマスターズプロ、比嘉力夫とシーサーポーズ。ヒート中はライバルでも、陸では気心の知れた仲間
ヒート前に整った舞台
時間は15時。この日の干潮だ。本大会の河原子は、潮が引いている時間帯のほうが波のかたちがいい。風はオンショア※3にまわったが、そこまで強く吹いてはいない。波のサイズは朝よりも上がってきている。全体的なコンディションは悪くない。
原田はひとり静かに海を見つめ、乗るべき波を見定めていた。
※3 海から岸に向かって吹く風。風が波頭を潰すため、ベストな条件ではない。

ヒート直前の海を見ながら集中力を高める。同時に、緊張を静めていく。コンテストでは、技術だけでなく強い精神力も求められる

台風のうねりを受け、時間を追うごとに波はサイズアップ。勝負の条件はそろった
迫力のアクションで会場を沸かせたが……
15時40分、原田のヒートが始まった。対戦相手は今村大介、安部 亙、鳥井伸一。まず原田が波をつかむが、軽いアクションにとどまり0.93※4。続いて今村がバックサイドでリッピングを入れ、フィニッシュまでつないで3.83をスコアする。さらに小ぶりなインサイドの波ですぐさま3.00を重ね、序盤から試合をリードした。安部は1.10、鳥井は2.10。開始から5分、安部がレフトの波をバックサイドで乗りつなぎ、3.27を出す。
原田は右奥のポジションで、じっとセットを待っていた。残り11分、プライオリティ※5を持った原田のもとに、ようやくサイズのある波が入る。波をつかむとスピードに乗り、迫力のあるフォームクライム※6でむずかしいセクションをメイクして4.67をスコア。ワンアクションだけだったが、その難易度が評価された。
「原田選手はパワーのある選手。このあたりに技術力の高さがうかがえます」
ライブ解説でも称賛の声が上がる。だがその後、安部がカットバックでつないでエンドセクションへ当て込み、6.50をマーク。安部がトップ、今村が2位につけ、細かなスコアを重ねる鳥井が3位。原田は4位となった。ヒート通過に必要なポイントは、わずか2.16。十分に逆転できる状況だ。
残り3分、原田がレフトの波を狙う。しかしダンパー※7だったため、テイクオフを断念。残り2分、プライオリティは原田にある。小さめの波でも、1ターンを入れられれば勝てる。原田は沖で待ちつづけた。だが残り1分を切っても、乗れる波は入らない。そのまま終了のホーンが鳴り、原田は最初のヒートで敗退。力強いサーフィンで見せ場をつくったものの、くやしい結果となった。●
※4 ライディング1本の最高得点は10点。Sリーグの大会ではヒート中のベスト2スコアの合計点で勝敗が決まる。
※5 ヒート中、それぞれの選手に順番に与えられる優先権。ヒート開始直後のプライオリティ(優先権)が誰にもない状態で、最初に波に乗ったサーファーからプライオリティの順位がいちばん低くなる。その後、次のサーファーが乗るとプライオリティの順位が繰り上がっていく。
※6 波のボトムから白波に乗り上げるアクション。
※7 いっきに崩れる波のこと。乗れるセクションが少なく、基本的にはサーフィンに適さない。

茨城サーフィンクラシックは、30年にわたって受け継がれてきた伝統の一戦。地域のサーフシーンの活性化に取り組むI.S.U(茨城サーフィンユニオン)の尽力が、その歩みを支えてきた

ゲートを抜け、ヒートへと向かう原田。「プレッシャーは半端じゃない」

1アクションながら4.67を叩き出したライディング。高いスキルで、きわどいセクションを攻めた

しかし、原田がまともにライディングしたのはこの1本のみ。8月7日から始まる北海道戦に向けて気持ちを切り替え、準備を重ねている。「サーフィンのレベルでは、ぜったい負けないと思ってるから。その気持ちさえ持ちつづけられれば、きっと勝てる。なんか信じる力ってそこの違い。今は、信じる力を勉強させてもらってる感じ」
POSTED : 2026-08-03