

PLAYERS : MASAKI HARADA
原田 正規
MASAKI HARADA
Sリーグ開幕戦26-27
Part 2
Sリーグ26-27シーズンの開幕戦、第30回茨城サーフィンクラシック河原子プロ3日目。原田の長女コアが出場するロングボードS.ONE女子のヒートが始まった。
文:高橋 淳
写真:飯田 健二
試練を越えてきたコアのプロキャリア
原田の試合から2日後の7月10日。コアにとって、今季の国内プロツアー初戦だ。WSLでは1月にフィリピン、7月初旬には韓国の大会に出場し、プロサーファーとして着実に経験を重ねてきた。
2024年4月、中学3年生で初めて挑んだプロトライアルで優勝し、Sリーグのプロ資格を獲得したコア。華々しくプロ入りを果たしたが、痛めていた肩を完治させるため、その年末に手術を受けることに。約5か月間、海から離れることを余儀なくされた。復帰後、トレーニングを積んで迎えた2025年は、S.TWO※1の井戸野浜オープンと太東ロングボードクラシックで準優勝するなど活躍。みごとS.ONEへの昇格を果たした。
※1 JPSA(日本プロサーフィン連盟)が運営する国内プロサーフィンリーグ、Sリーグには、トップカテゴリーのS.ONEとその下部カテゴリーにあたるS.TWOがあり、年間ランキングによって昇格・降格が決まる。

原田のヒートがあった7月8日に会場入りしたコア。自身の出番に向けて、徐々にモチベーションを上げていく

ヒート当日、波のサイズが落ち着き、ロングボードには絶好のコンディションとなった
うねりよし、風よし、潮もよし
台風9号は沖縄の南を北西方向へ進んでいた。茨城・河原子はこのうねりをかわすため、やや波はサイズダウンして腰〜腹、セット※2で胸前後。風は弱く、海面はクリーン。コアのヒートは午前10時すぎ。潮は早朝のロータイドから十分に上げてきたタイミング。舞台のセットアップは完璧だ。
※2 その日のなかでも大きなうねり。何本か連なって沖からやってくる。本数や周期はコンディションによって異なる。

コンテストジャージの裾と髪を後ろで結びながら海を見つめ、乗るべき波を見定める

母のさとみ、弟のイムアに送り出され、いざヒートへ

ヒートを戦うのは3人、勝ち抜けるのはふたり。左から、内田鈴音、コア、吉川広夏。内田は13歳でプロ公認を獲得したアップカマー。吉川はJPSAロングボード女子の年間グランドチャンピオンに6度輝き、世界を舞台に活躍する、日本を代表するプロロングボーダーだ

16歳、女子高生プロサーファーのコア。Sリーグのジャージ姿もすっかり様になってきた
絶え間なく波が来る激しいヒート
ヒートが始まると、まず内田がすばやいノーズライドで4.17※3をマーク。コアも早い段階から波をつかみ、積極的に仕掛けていく。続いて吉川がサイズのあるセットをキャッチ。王者の貫禄を見せるライディングで5.67。コアは負けじと果敢に攻め、ハング5※4を入れて4.87。さらに吉川がセットの波に乗り、長いハング5からリッピング、カットバックへとつなぐコンビネーションで8.00のハイスコアを叩き出した。波数は多い。息をつく暇もない展開だ。
内田が長いハング5からフィニッシュまできれいにまとめると、コアもここで会心のライディングを見せた。ハング5からカットバックで波をつなぐとふたたびハング5。最後のセクションもきっちりメイクし、6.67を獲得。合計11.50として2位に浮上した。その直後、吉川がハング10※5を決めて5.97。トップを独走する。焦点はコアと内田による2位争いへ。そこから約10分間、激しい攻防が続いた。潮が上げるにつれて、波はさらによくなっていく。
コアには、この試合にかける思いがあった。昨年のグランドファイナルで敗退した経験から「何もしない日はつくらない」と決め、練習を重ねてきた。河原子はアマチュア時代に優勝したことのある場所。そのときのいいイメージを胸に、もう一度ここで勝ちたい。
残り3分。プライオリティ※6はコアにある。だが、内田がハング10を入れ、そのままロングライド。6.27をマークし、合計13.10でコアを逆転した。
残り2分。コアにはまだプライオリティがある。セットをつかめば逆転できる。ヒート終了間際に来た小ぶりな波に乗り、ハング5を入れる。しかし、インサイドまでつなぐことができず3.77。ここでタイムアップ。
コアは3位。1回戦敗退という結果に終わった。
※3 ライディング1本の最高得点は10点。Sリーグの大会ではヒート中のベスト2スコアの合計点で勝敗が決まる。
※4 片足の5本の指でサーフボードの先端をつかみながら波を滑るテクニック。
※5 両足の10本の指でサーフボードの先端をつかみながら波を滑る、難易度の高いテクニック。
※6 ヒート中、それぞれの選手に順番に与えられる優先権。ヒート開始直後のプライオリティ(優先権)が誰にもない状態で、最初に波に乗ったサーファーからプライオリティの順位がいちばん低くなる。その後、次のサーファーが乗るとプライオリティの順位が繰り上がっていく。

得意のハング5を繰り出し、果敢に戦ったコア

インサイドまで乗りつなぎ、ポイントを重ねる。しかし、勝利の女神は微笑まなかった

コンテストジャージをブースに戻すと緊張の糸が切れ、涙が溢れた。ご近所さんでもある先輩プロサーファー、脇田紗良がコアを慰める

車に戻っても涙は止まらない。そのわけが痛いほどよくわかる原田は、愛娘の肩にそっと手をかける
連敗の先で手にしたプロ初優勝
コアにとって、くやしさの残る試合が2戦続いた。河原子の直前に出場したWSL韓国戦では、ボードのトラブルが起きていることに気づかず、1本も波に乗れないまま敗退。調子が上がっている手応えを感じていただけに、やりきれない気持ちが募った。そして河原子では、自分のサーフィンを見せながらも接戦の末に1回戦敗退。
それでもコアはくじけず、立ち止まらなかった。「何もしない日はつくらない」と決めて積み重ねてきた練習を続け、次の試合へ気持ちを切り替えた。
河原子から約2週間後。舞台はふたたび茨城、ポイントは鉾田。S.TWOのロングボード開幕戦、鉾田プロアマオープンに出場したコアは、女子ファイナルを勝ち切り、ついにSリーグ初優勝を果たした。韓国、河原子と続いた敗戦の先でつかんだ勝利。原田親子のSリーグ26-27シーズン開幕シリーズ「IBARAKI BREAK」は、コアの優勝で有終の美を飾った。●

写真提供:原田コア
トロフィーを手にし、笑顔を取り戻したコア。隣は、ロングボードを始めたころからともに切磋琢磨している友だち、大塚海音。未来はきっと明るい
POSTED : 2026-08-13