TOP BLOG Xゲームズ・サクラメント大会、ベストトリック銅メダル獲得

Xゲームズ・サクラメント大会、ベストトリック本番の日がやってきた。現地に到着して5日目。時差ボケの影響もなく、体調は万全だ。朝食をとり、シャトルバスで本番の2時間前に会場へ到着した。
3日間の公式練習はすべてランに使ったため、ベストトリックの練習はしていない。当初から、本番前の30分間のウォーミングアップで合わせようとエマと話していた。ウォーミングアップに入る前、アスリートラウンジでストレッチをしながら、ふたりで作戦を確認した。選んだトリックはフェイキー1080※1。エマがこだわりをもつ高難度トリックで、Xゲームズの本番では、ギー・クーリーとエマしか成功していない。
昨年のソルトレイクシティ大会では、このトリックで4位だった。今回、別のトリックにするかどうか、サクラメント大会への出場が決まってからエマと相談した。しかしエマは、「クオリティを上げたいから」とフェイキー1080にこだわり、結果は気にせず、もう一度このトリックに挑戦することを選んだ。
フェイキー1080はとてもむずかしい。着地の衝撃で足にかかる負担も大きく、反復練習することさえ困難なのだ。それでも、大会の3か月ほど前から少しずつ調整を重ねてきた。ただ乗るだけでは、思うように点数が伸びない可能性がある。もちろん、できるかぎり上位につけたいし、正当に評価してもらいたいという思いもある。ソルトレイクシティ大会では、試合開始後の1回目のトライで成功したものの、思うように点数が伸びなかった。上位選手のトリックも複雑で難易度が高かったが、エマもわたしも、難易度やリスクの高さに大きな差はなかったと考えていた。
そこで、エマと行き着いた仮説がある。「試合時間が20分間のセッション形式※2なら、後半に成功させたほうが上位に入れるのではないか」。そのため、ウォーミングアップでは成功させず、本番のできるかぎり後半でメイクするという作戦を立てた。前半は練習のつもりで、乗る感覚だけを合わせようと話した。
本番がスタートした。1回目、2回目、3回目と、予定どおり乗らずに終えた。周囲の様子を見ていたほかの選手たちも、3回目になると徐々にトリックを決めはじめた。残り時間は10分弱。滑れるのは、あと数回だろう。エマが「次、乗りにいくわ」と言った。わたしも、それがいいと判断した。
4回目は、タイミングがわずかに合わずミス。怪我のリスクが高いだけに、無理は禁物だ。あと1回はできるだろうと思い、焦りはなかった。そして5回目。落ち着いた様子でスタートしたエマは、完璧にメイクした。わたしもエマもひと安心し、得点の発表を待った。結果は3位。昨年よりも点数が伸びた。ほかの選手たちは昨年と同じトリックを前半に決めていたが、今回はエマのフェイキー1080の得点が、ほかの選手たちの得点を上まわった。もちろん、とてもクリーンにメイクできたことがいちばんだが、わたしたちの読みも当たったようだ。何より、エマもわたしも、フェイキー1080が評価されたことがうれしかった。
そのまま制限時間が終了し、エマはみごと銅メダルを獲得した。昨年のソルトレイクシティ大会では、ランで銅メダルを獲得したものの、ベストトリックは4位だった。今回、初めてベストトリックでメダルを獲得でき、ふたりで大喜びした。フェイキー1080をあきらめず、挑戦しつづけて本当によかった。
また、今回のベストトリックは、エマとわたしにとって、コンテストでの新たな試みの場でもあった。それは、ほかのスケーターの滑りやトリックなど、周囲の状況を見ながら作戦を考えることだ。これまでのエマは、作戦というものをほとんど考えてこなかった。もちろん、ベストトリックで出す技や、ランのルーティンを事前に決めることはしてきた。しかし、まわりのスケーターの滑りや得点を見て判断することはせず、練習してきたことを最初から全力で出すだけだった。昨年のソルトレイクシティ大会で、ベストトリックの点数が思うように伸びず、くやしい思いをした。その後、過去の大会映像を見返すと、前半に高難度のトリックをメイクした選手より、後半に少し難易度の低いトリックを決めた選手のほうが高い点数を得ているケースがあった。
点数は人が判断するものだ。トリックの優劣については、見る人によって判断が異なる部分もある。滑走する順番によって点数の出方が変わるというのも、あくまで憶測にすぎない。それでも、どのような点が評価されるのかには一定の傾向があり、それを予測することも必要だと思う。がむしゃらに、最初から全力を出しきるのもいい。しかし、練習してきたことを最大限に発揮し、きちんと評価してもらうためには、作戦を立てることも有効なのだ。今回は、それがうまくハマり、銅メダルという結果につながった。
トリックは、自分の努力の結晶だ。そのトリックが評価されることは、努力を続けてきてよかったと思える瞬間なのだ。
※1 フェイキー(後ろ向き)で進み、空中で体とボードを一緒にお腹側へ3回転させるトリック。
※2 制限時間内に、選手が順番に何度でもチャレンジできる大会方式。

海外のオーディエンスも、まだあどけないエマを温かく見守ってくれる

本番直前。エマはまったく緊張していなかった

ナイジャ・ヒューストンとメダルセレモニーで記念撮影。エマ自身の努力の賜物でもあるが、たくさんの人たちがサポートしてくれていたおかげでもある。みんなの応援がなければ、このような結果は残せていないだろう
POSTED : 2026-07-21